幼幼家則

村瀬豆洲 『幼幼家則』現代語訳(パイロット版)

東京の浅田宗伯、京都の福井貞憲と並び、明治漢方三大家の一人と称された名古屋の村瀬豆洲(1830-1905)が著した『幼幼家則』は、時・還・読・我・書の五巻より成り立つ、日本小児漢方の歴史に燦然と輝く名著である。中国文献や本邦の書物を詳読した豊富な知識を背景に、本朝経験方を広く採用、応用した上で、さらに村瀬家三代にわたって経験された家試方を数多く掲げ、湯液のみならず灸治療におよぶ家伝方までも余すところなく披露している。

その特徴は、徹底した臨床目線である。いくら有名で伝統的な方法論であったとしても、実臨床において役に立たないことは、はっきりとそのように言及し、当時流行しつつあった西洋医学や外国由来の新知識への手放しの傾倒を的確に指摘し、小児にとって有害なものは手厳しく批判するその精神は、小児臨床に携わった者なら誰もが共感し、尊敬の念をもって読み進めるであろう素晴らしい文章に満ちている。そしてこの書物に記された臨床経験と知恵は、現代小児漢方を志す者にとって、必ず座右のものとなり得る価値を有しているのである。

2015年秋ごろ、現公立瀬戸旭看護専門学校校長で、かつて公立陶生病院にて小児漢方を長年探求されてきた山口英明先生がこの『幼幼家則』に感銘を受けられ、漢方臨床家で医学史の大家である盟友安井廣迪先生に紹介された。それぞれの教え子であり、小児科医また漢方医として働く木許(広瀬)泉先生と、高村に対して、是非これを現代語に訳し小児漢方の勉強をしようではないか、と4人での抄読会のお声かけを頂いてから、早数年が経過した。木許、高村両名の経験の少なさから、作業は遅遅として進まなかったが、途中、医学史にも詳しい川島希先生も加わって頂き、加速度的に翻訳は進むかに見えた。結果、2019年7月現在、まだ全ての文章を完全には翻訳できていない。しかし、ほぼ作業は終わりつつある。我々だけにこの上質な小児漢方の知識を埋没させてはいけない、広く世に知らしめ、ひいては日本の子供たちの明るい未来に寄与するために、『幼幼家則』を周知させなくてはならないとの5人の共通の思いから、今ここで、未完成ながら、公共の資料とするべく、現代語訳を公開する。随時修正し、よりよいものとしていくことを前提に、まずパイロット版から、この小児漢方懇話会のホームページに掲載していくこととする。

文責:高村光幸

『幼幼家則』現代語訳プロジェクトメンバー

木許泉(広瀬クリニック院長)・高村光幸(三重大学病院漢方外来助教)・川島希(名古屋大学小児科助教)・山口英明(公立瀬戸旭看護専門学校校長)・安井廣迪(安井医院院長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【 幼幼家則 PDF書庫 】

こちらから、幼幼家則(PDF)のダウンロードが可能です。